《 ほんやさんの応用 》のページ

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 ≪ほんやさん≫はすごい!自由に様々な応用へ。




 こんなに安価な道具で、本が手作りできるのか?



もっとも簡単な手づくり製本機《 ほんやさん 》の創作で、かねてからの念願だった本作りの夢が実現。そして、これを使って「あれも製本してみよう、これも製本してみよう」とどんどん拡大。

このページは、様々なものに挑戦していった苦悩というか、快感というか、応用の軌跡の物語りである。

 写真は、進化した手作り製本機V世だ。


 右の写真は、最新の手作り製本機《 ほんやさんV世 》の著しく進化した部分だ。

紙束を揃え易いように、三角スリットを作り、かつ、揃え棒の穴を2ヵ所(B5,A4判は4か所)削孔している。これで、紙揃えが三重にし易くなったと同時に、サイズの小さい紙でも製本が可能となった。
 以前に買って戴いて、≪ほんやさんT世≫を持っておられる方々に、無償でV世のように改善中である。



 一 手づくり製本の《 製本キット 》の誕生

 

私は五千冊以上の製本をしてきただけに、この製本機を手にとると、何とも子どもを抱いているような気持ちになる。今のようにコンパクトな形になってから、本当に子どものように可愛いい。

 

三つ並べると、まさに3兄弟みたいだ。両手であちこち触ってみたり、撫でまわしたり、逆さまにして立ててみたり、サイド側を縦にして立ててみたりした。横倒しもしてみた。暫くの間あれこれと戯れながら、「う〜ん、君は立派だなあ」と感心して、「これからもどうぞよろしくお願いします」と声を出した。この無駄のないシンプルさは、木の香りとともに、木目の美しさも重なって、部屋の中での飾りにもなっている。

   

早速、「青空文庫」のホームページにアクセスして、A5版で100頁ほどの論文を取り込み、ワードで編集し直して、A4用紙25枚に両面印刷し、一枚ずつ二つ折りして、この製本キットで製本を試みた。

 

仕上がりが丁度100頁であるから、背の突出量は6mmぐらいが適当か。背からの紙束の突出は、3mm、6mm、 9mmという3組の下敷き柱で、突出量が自在に加減できる。さらに、この3組の下敷き柱を組み合わせれば、突出量を、12mm,15mm,18mmと調整できて、創作本の厚さや表紙のあり方などに十分に対応できる。度重なる試しの連続で、ボンドの沁み込む具合と、補強紙や表紙を装着するときのし易さは、この6mmが製本の失敗を防ぎつつ、製本効率を上げる< 標準値 >と言えるだろう。

 

 二 目を瞑っても製本ができるか?

 

これを使って、「目を瞑っても製本が出来るのではないか」と思い、両手による紙揃えから、目を瞑ってやってみた。紙を投入して、蝶ネジを締めて、元の正立にして、目を開けた。お見事お見事! 紙の背は、実に綺麗に揃っていた。「ありがとうよ」と、我ながら感心した。印刷した紙の二つ折りは、既に、目を瞑っても正確に出来るように「二つ折り機」を製作していたから、この一連の操作は、目を瞑っても出来ることが分かった。背のボンド付けだけは、完全に目を瞑ることはできないが、これも近いうちに出来そうであり、背の補強紙付けや表紙付けは難しくないから、これらの全工程が、目を瞑っても可能になる日も近いと確信が持てた。

 

何故、こんなことを言うかというと、これまでやってきた多数冊の本づくりは、単純作業の連続であり、大好きなプロ野球やゴルフの番組を観ながらでないと、心身に良くない。だから、私の製本作業は、これらの番組のときにしか行わない。そこだけに集中することが出来ない、ずるい人間だから仕様がない。

 

突き詰めていうと、前々から、「最後まで目を瞑って製本できないかな?」と、更にずるいことをつらつら思っていた。紙の二つ折りの作業は、目を瞑っても正確に折れる道具を考案して解決していた。それに今度の製本キット≪ほんやさんV世≫の登場で、9割がたは目を瞑っても製本ができるようになった。これは、極めて画期的なことで、視力障害者の方々を初め、手先に障害をもった方々の本作りへ、大きく道を切り開くことができると確信した。勿論のこと、私のようなずぼらや、手づくり製本が大好きな人たちにとって、とても有難い進歩だ。

 

前に使っていた製本キットT世は、一千冊以上もの製本をしてきたにも関わらず、作ったばかりの状態と変わらない。耐久性に優れたものであるが、今度の≪ほんやさんU世≫は、紙揃えが格段にし易くなったと同時に、一生使えそうな強靭さを感じる。我が家の優れ物がまた一つ増えたようだ。


 三 多数冊の製本作業は、2機を使って、鼻歌まじりで。

   

この≪ほんやさんT,U世紀≫を使って、既に、3400冊を越える本を製本してきた。一日に10冊以上をつくるときは、これら2機を交互に連用して、流れ作業をしてきた。


 

詳しく述べると、1機目で背にボンド付けをして、補強紙か表紙を装着した後、不要な紙を一枚敷いた上に、それを倒立させて置く。そうすると、背が紙一枚分だけ高くなるので、製本キットとボンド付けしたばかりの本の自重が背にかかる。すると、背中がピシっと伸びて綺麗になると同時に、敷いた紙がボンドの水分を吸収して、乾燥も速くなる。そうして放置した後、すぐに、2機目で背のボンド付けに取り掛かる。慣れてくると、一冊の製本に凡そ2分程でできる。次に、倒立させていた1機目の本を外し、平らな板の上に広い紙を敷いて、やはり本の背を下にして並べていく。そして、1機目の後に、ボンド付けした2機目を倒立させる。次に、本を外した1機目でまたボンド付けに取り掛かる。というように、順繰りと流れ作業をしていく。そうすると、十冊の製本は30分も掛からず出来上がり、後は乾燥を待ち、本に気になる箇所があれば、手直しして仕上げをすればいい。

 

このようにして、多数の本を流れ作業でやってきたので、通算3400冊ぐらいの製本が、苦痛にならずに済んだわけだ。
 手づくり製本を始めたばかりの時は、とにかく「一冊立派にできたらなあ」との願いでいっぱいだった。それが、今では、多数冊の本を、それも目を瞑っても製本できるところまでなった。我ながら、何と貪欲な人間であろうかと、自分に厭きれている。頭の弱い自分でも、多数の冊子づくりを鼻歌まじりでできる程に進化してきたものだ。


 四 製本キットはよく働く

   

今、この≪ほんやさん≫を使わない日はない。人や他団体から受ける編集と製本は、依頼がある度に印刷し、製本している。だから、個人的に使いたい資料や本も、何でも冊子風にしてしまう癖がついてしまった。

   

写真アルバムづくり

   

戦後すぐの小学校の同窓会に参加して、55年ぶりに担任だった先生を初め、かっての旧友たちと会った。いつでもどこでもデジカメを持ち歩いているだけに、ここでもパチパチと級友の表情を撮りまくった。それを編集して、この≪ほんやさん≫を使って40頁の写真アルバム集をつくり、欠席者へも送ってやった。送った全員から、お礼のメールや手紙、電話などがかかってきて、数十年ぶりの歓談ができ、嬉しい日々が続いた。もし、この≪ほんやさん≫を創作していなかったら、こんなことが出来ないだけでなく、数十年ぶりの交誼は実現しなかっただろう。

   

文庫本作り

    

また、「樋口一葉のこの小説は読んでみたいなあ」と思ったら、「青空文庫」のホームページにアクセスして、全文をワードにコピーして印刷し、すぐに製本キットで製本してしまう。この間、僅か15分。同様に、「日本ペンクラブ」にアクセスすれば、小説はもちろん、随筆や詩、短歌、評論などなど、たくさんの文学小説に出会える。好きなものはすぐに製本してしまう。プロレタリア作家と言われる故人・宮本百合子の評論は千を超えてあり、これらを製本するのに現在嵌ってしまった。

   

歌詞集づくり

    

沖縄の歌手・夏川りみさんのあの透き通った声と歌の歌詞が大好きだから、それらの歌詞をインターネットで検索し、それをワードにコピーして、印刷、製本し、「夏川りみ歌詞集」の出来上がり。

   

新聞の論文づくり

    

常に真実を伝え続けている「しんぶん赤旗」の論文に感動すると、そこへすぐにアクセスし、その内容を編集して、この製本キットでA5版の冊子を作成し、小さいバッグに入れて、どこでも読めるようにする。いずれも、ホームページへのアクセスから製本まで15分あれば可能だ。

   

一級、準一級の漢字検定問題集づくり

    

一級の漢字検定試験で、95%以上の得点で合格したいから、エクセルで編集した四字熟語や当て字、表外読み、諺、国字などなど、練習問題風冊子に製本し持ち歩いている。最近は、これらを中学生が使っている英単語カードのように、カード作りも成功して、学習の能率と効果を上げている。

   

カレンダーやスケジュールノート作り

    

昨年の暮れから、このA4判≪ほんやさん≫を使って、自分が撮影してきた花の写真で、大小さまざまなカレンダーを作り、たくさんの人たちに喜んでもらった。ついでに、一年間の一日一日の予定・記録ノートを製本し、自分に一番使いやすいノートを創作した。「皇帝ダリアカレンダー」はこの国唯一の私の創作である。

   

布張りの上製本づくり

    

布張りの日記帳や手帳を作るのにも挑戦したら、この製本キットを使えば、作業が楽になり、特に、開きやすくするための、仕上げの工程での溝締めと接着に抜群の効果があることが分かった。ついでに、鎌倉時代からの和綴じ本のモデルに挑戦してみたところ、背の糊付けと紐とおしの工程で威力を発揮することが分かった。それは、製本キットを横倒しにしても、立派過ぎるほど安定した水平が保たれているからできることだ。

 

メモ用紙作り

    

印刷ミスや切断した後の不要な紙などを利用した、メモ用紙作りは3分もあれば良い。メモ用紙をいつも必要としている、ホームセンターの従業員の方々に差し上げると、大変喜ばれる。代わりに、私が何か物を作りたいときに、さまざまな知恵と技術を惜しみなく提供してくださる。A4用紙を正確に二つ折りする折り機の発想、いちいち見ないでも紙を一枚一枚正確に左手で捲れる梯形木台の考案、製本した本の癖をとるための多数冊の同時圧縮機の工夫、一挙に200枚くらいの紙に5mmの穴を綺麗に穿孔する方法……などなど、たくさんの知恵と技術を戴いた。

   

厚い本を薄い冊子に作り替える

    

私は、コンピューターやその操作で分からないことができたら、家の中にある関係の説明書や本を、寝そべって調べる癖がある。この点でもずぼらなのだが、一番困るのが、あのワードやエクセル、HTMLなどの分厚く重い説明書を調べる時だ。寝そべって調べるには重過ぎるし、目に近くなっていよいよ目が悪くなる。

 

そこで、この≪ほんやさん≫の登場だ。千ページ近い本を、章毎に纏めて4〜5章くらいに分割し、それをカッターで切断する。そしてすぐに、ワードで表紙をつくり厚紙に印刷する。切断した紙束を≪ほんやさん≫に投入して、背にボンドをまんべんなく塗り、半乾きになったとき表紙を被せて装着する。そのまま使い古しの紙一枚の上に背を下にして放置する。このようにして、何冊かの薄い冊子が出来上がり、寝転んで見ても良いし、バッグに入れて持ち歩いても良いわけである。したがって、専門の数学の本なども解体されて軽くなり、老いつつある我が身を助けつつ、いつも学習意欲を持たせ続けている。

 

薄い何冊もの冊子を、厚い本に作り替える

    

定期的な冊子やパンフレット、設計図などが段々と増えていくと、その在処さえ分からなくなり、管理が大変になる。ここでも≪ほんやさん≫が威力を発揮する。何冊もの冊子を纏めて製本してしまう。背表紙には、別ページで触れている「コの字型表紙」をボンド付けすれば、背に表題も書けて一目瞭然の厚い本や資料集が完成する。場所もとらずに、直ぐに取り出せて、管理が楽ちんだ。月ごと年ごと号数ごとなどの整理に便利だ。

   

 五 薄い冊子は「究極の中綴じ製本機」で

   

中綴じ製本も丁寧に

    

A5判の60ページ以内の薄い製本は、印刷したA4用紙の中心軸に中綴じ用ステープラで針を綴じた後、二つ折りするだけで簡単に製本できる。しかし、折り目のところがどうしても膨らみが出て、ページが捲り難い。でき上がった何十冊かの中綴じ本を、どうにかしてぴしっと圧縮して、出来上がりがよくならないか、あれこれと辛吟すること一ヶ月。

   

数十冊をピシッと圧縮

    

いつも、廉くて、しかも易しく、目をつぶっていてもできないかが、貪欲な私の夢だから、辛吟するのは当たり前だ。作り上げた多数の冊子の上に何かを載せて圧縮すると、どうしても中味がはみ出してくる。いろいろと設計してみて落ち着いたのが、A5判ピッタシの大きさの箱を作り、一冊ずつ中綴じして二つ折りした後、その箱に上下交互にポンポンと入れ込んでいって、上からA5判ピッタシの板で上から被せて、それに重石を載せて放置すれば良い、という構造だ。勿論、取り出すときのことを考えて、本の縦方向に、指が入るほどの板一枚分の厚さをとっておく。これで中の本をたやすく取り出せるようになった。

 

早速、18mm厚さの板を切断して製作した。24頁ものの冊子を500冊ほど希望されていたので、中綴じして二つ折りした後、ポンポンと80冊ほどこの圧縮箱に入れていって、一夜前述のように放置した。翌日、中の本を取り出すときドキドキした。一冊ずつピシッと圧縮されているかどうかである。冊子を取り出せないほど、よく締まっていた。冊子の角の方に指を入れて取り出してみると、簡単に取り出せた。一冊ずつピッタンコになっていた。それらの小口を3mmほど、紙切断機で3冊毎に切断した。立派な冊子が完成した。材料代1100円で圧縮箱ができたので、大満足した。

 

中綴じも本物みたいに

    

しかしである。この中綴じ製本という、ホッチキスを使う簡便な製本にも、問題があった。問題とは、貪欲な私にとっては、次の課題となるわけだ。市販の中綴じ機は600円くらいから高価な物まで、多種多彩である。私も、2種類の中綴じ機を使ってきた。問題は、針を常に定位置に打てるか、それも打った針が二つとも直線に綺麗に並んでいるか、二つ折りした時に、冊子の上下と小口が綺麗に揃っているか、冊子の厚さに針の太さが適切かどうか、などなどである。すなわち、どこから見ても仕上がりが良く、ホッチキスを使った割には「本物の本みたい」と褒められるかどうかである。

 

24頁の冊子(A4で6枚)の製本を頼まれることが多いので、脚長6mmのNo3という針を使ってきたが、二つ折りしたときに折り目がどうしても膨らんでしまう。針が細いNo10を使って出来ないかと思案している内に、一度も使ったことがなく針打ちの部分が90度回転する、小型のホッチキスを持っていることに気付いた。さらに、紙の正確な二つ折り機は作っていたので、その二つをあれこれ眺めながら、二つを上手く組み合わせられないか、いろいろやってみたところ、「お〜、これはいけるぞ!」と閃き、早速試作にとりかかった。すなわち、これまで使ってきた紙の二つ折り機と僅か630円のホッチキスとのドッキングだ。

 

試作した。ホッチキスを固定して、紙束を揃えるための木枠を調整して、針がA4用紙のど真ん中にくるようにした。木枠を両面接着テープで固定した。そして、A4用紙を6枚重ねて針を打ち、その紙束を180度回転させて針をまた打った。ホッチキスを上側に倒して、針を打った紙束を木枠にきちんと合わせて二つに折った。「お〜、なんと素晴らしい!」と、我ながら驚いた。折り目にピッタシの針二つ。それも二つの針が一直線になっている。針は、細いNo10を使ったから、折り目が膨らまずピシッとなっている。

   

究極の中綴じ製本機の誕生

    

「これはいいぞー!」と、早速、私の友人である名古屋のアイデアグッズ工房の高橋さんに送った。高橋さんも「丈夫で簡単、これは素晴らしい、特許ものですよ」と絶賛された。これを元に、次々に改善ヒントを発見して試作した。紙のサイズに合わせて、自在に中綴じができるように溝を掘り、L型の木枠をスライドさせて、左右上下の微調整ができ、針箱置き場もある代物になった。私も、ビスやネジ、接着の仕方、木枠の大きさなど、あれこれと試みた。

 

そうして作った中綴じ機で、実際に針一箱分の1000本の針を、ガチャガチャ打って耐久性を試した。びくともしなかった。そのころ、24頁ものの冊子を350冊作る予定があったので、先ず100冊を試みた。プリンターが一冊分を刷り上げる毎に、ガチャガチャと打って二つ折りし、それを前述した圧縮箱に投げ入れる。まさに、テレビを観ながらの流れ作業ができるようになった。雑誌で「究極の中綴じ機」だと評価された。
 現在は、この1台の中綴じ機で、A3用紙からA6用紙まで自在に中綴じできる≪究極のなかとじくん≫を製作し、全国の方々に喜ばれている。

 

 六 薄くても厚くてもドンと来いだ

    

これで、薄い冊子でも厚い本でも、サイズの小さい豆本から設計図面の大きなA2判でも、一冊から多数の冊子まで、手づくり製本でドンと来いだ。≪究極のなかとじくん≫も、早速、名古屋の友人のホームページ「アイデアグッズ工房」に載せられた。すぐに注文のメールが届いた。何と嬉しいことだ。名古屋と福岡とを繋ぐ電話回線で「カンパ〜イ!」をした。

このようにして、どんな冊子の製本でも、目を瞑っても可能なほどに到達し、長い間の手づくり製本の夢が実現した。